電気設備や防災設備の点検・改修にともなって発生する使用済みバッテリーの処分について、近年、発注者や施設管理者から「法令に則った適正な処理」を求められる機会が増えています。
ニカド電池やリチウムイオン電池、鉛蓄電池など、こうしたバッテリー類は廃棄時に有害性・危険性を伴うことがあり、産業廃棄物、あるいは特別管理産業廃棄物に該当する場合があります。
この記事では、特に設備工事や電気工事を請け負う事業者の方に向けて、以下の観点からバッテリー廃棄物の適正処分に必要な基礎知識を解説します。
もちろん、通常の事業活動において使用済みバッテリーが発生し、適切な処理方法を検討している企業様にも参考としてご活用いただける内容です。
1.バッテリーの種類
主な設備や防災機器に使用されるバッテリーには、以下のような種類があります。
- リチウムイオン電池
非常灯や警報機器などに多く使用される小型高性能な電池です。発火リスクがあるため、保管や運搬には特に注意が必要です。廃棄時には主に金属くず、汚泥、廃プラスチック類に該当します。 - ニカド電池(Ni-Cd)
やや古い設備に多く見られ、有害なカドミウムを含みます。ただし、廃棄物としては特別管理産業廃棄物には分類されません。リチウムイオン電池と同様、金属くず、汚泥、廃プラスチック類として処理されます。 - ニッケル水素電池(Ni-MH)
比較的新しい非常灯などに使用される電池で、環境負荷が低いとされていますが、処分区分としては他の電池と同様に金属くず、汚泥、廃プラスチック類に該当します。 - 鉛蓄電池
非常用電源装置などに使われる大型のバッテリーです。内部には希硫酸が含まれており、この電解液部分が特別管理産業廃棄物(廃酸)として扱われます。外装は金属くずや廃プラスチック類に該当します。
これらのバッテリーは、事業活動に伴って発生するものであり、家庭ごみとは異なる「産業廃棄物」として取り扱う必要があります。種類を正しく把握し、適切な処理を行うことが重要です。
2.工事で出たバッテリーの処理方法
電気設備や防災機器の交換工事では、使用済みのバッテリーが発生します。これらは事業活動に伴って生じるものであり、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃掃法という。)上は産業廃棄物に該当します。
特に注意が必要なのは、「交換したバッテリーをついでに持ち帰る」といった対応です。一見すると手間を減らす善意の行為に思えますが、廃棄物の収集・運搬には一部例外を除いて、原則として許可が必要です。電気工事業者が自ら廃棄物を運搬する場合でも、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得していなければ、廃掃法に違反するおそれがあります。
また、バッテリーの種類によっては内部に特別管理産業廃棄物(例:鉛蓄電池の希硫酸)が含まれていることがあり、この場合は通常の産業廃棄物収集運搬業の許可だけなく特別管理産業廃棄物の収集運搬許可が求められます。
現場では「再利用できそうだから廃棄物ではない」と判断されるケースもありますが、使用済みで保管する意思がなければ、それは法的に廃棄物とみなされます。また、倉庫などに一時保管する場合でも、漏えいや発火などの危険性に備えた適切な管理が必要です。
使用済みバッテリーは、廃棄物処理法に則って、許可を持つ処理業者を通じて適切な処分場へ搬入しなければなりません。法令を遵守した処理が行われていない場合、排出事業者も含めて責任を問われる可能性があります。
3.産業廃棄物について
そもそも「産業廃棄物」とは、どのような廃棄物を指すのでしょうか。設備工事やバッテリー交換の現場においても重要となる、この区分について改めて確認しておきましょう。
産業廃棄物とは、事業活動に伴って排出される廃棄物のことです。その定義は廃掃法に基づき、燃え殻や廃油、廃プラスチック類、紙くず、金属くずなど、全部で20種類に分類されています。
これらのうち、燃え殻・廃油・廃プラスチック類・ばいじんなど12種類は、すべての事業活動から排出された場合に産業廃棄物とされます。一方、紙くず・木くず・動物のふん尿など7種類は、建設業や畜産農業といった特定の業種から排出された場合のみ産業廃棄物に該当し、それ以外では一般廃棄物とされます。
また、産業廃棄物の中でも、毒性や感染性など人や環境への影響が特に大きいものは「特別管理産業廃棄物」と分類され、取り扱いにあたっては一層厳格なルールが設けられています。たとえば鉛蓄電池に含まれる希硫酸などがこれに該当します。
特別管理産業廃棄物を運搬・処分するには、通常の産業廃棄物処理に必要な許可とは別に、特別管理産業廃棄物の収集運搬業・処分業許可を取得する必要があります。
産業廃棄物は、排出事業者が自ら処理を行うか、もしくは適切な許可を持つ処理業者に委託しなければなりません。委託する場合は、書面による契約の締結およびマニフェスト(管理票)の交付・管理が義務付けられています。
これらのルールを理解し、適正な処理を行うことが、法令遵守だけでなく、安全な業務運営にもつながります。
4.工事の場合は誰が排出事業者になるのか
産業廃棄物の処理において重要な考え方の一つが「排出事業者」です。排出事業者とは、廃棄物を排出した責任を負う事業者のことで、誰の事業活動によって不要物が発生し、その処分を決定したのかによって判断されます。
では、設備や防災機器の交換工事で使用済みのバッテリーが出た場合、誰が排出事業者になるのでしょうか。
結論としては、工事請負契約において「撤去物の処分まで含めて工事業者が対応する」内容になっている場合、工事業者が排出事業者とみなされるのが一般的です。現場でも、交換作業から処分まで一貫して施工側が担うケースが多いためです。
一方で、契約内容や処分の実態によっては、以下のように排出事業者が変わることもあります:
施主(建物の所有者や管理者)が処分まで手配する場合
⇒ 発注者が排出事業者
元請が処分まで対応する契約であれば
⇒ 元請が排出事業者
元請が下請に一任し、処分実務も行っている場合
⇒ 実質的に下請が排出事業者となる可能性あり(ただし責任は元請が問われることも)
法律上は「排出事業者=廃棄物の処分を最初に意思決定した者」とされており、単に撤去を行っただけではなく、処分の主体が誰かが重要となります。
現場トラブルや行政指導を避けるためにも、誰が排出事業者となるかを契約書や工事仕様書の段階で明確にしておくことが望まれます。
5.バッテリーを処分する際の流れ
工事に伴って発生した使用済みバッテリーは、法令に基づいて適正な手順で処分しなければなりません。ここでは、産業廃棄物としてバッテリーを処分する際の一般的な流れをご紹介します。
① バッテリーの分別・保管
撤去したバッテリーは種類ごとに分別し、漏液や破損がないように適切な容器に保管します。特にリチウムイオン電池などは発火リスクがあるため、金属と接触しないよう注意が必要です。
② 委託先業者の選定
収集運搬や処分を委託する場合は、産業廃棄物処理業の許可を持つ業者を選定します。鉛蓄電池など特別管理産業廃棄物に該当するものを含む場合は、特別管理産業廃棄物の収集運搬・処分許可を持つ業者が必要です。
③ 契約書の締結とマニフェストの作成
委託にあたっては、書面での契約(委託契約書)を交わし、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行します。マニフェストは排出事業者が処理の完了までを確認・記録するための重要な管理ツールです。
④ 処理・処分
許可業者によって、バッテリーは中間処理や再資源化、または適正な最終処分場へ搬入されます。適切な処理が行われたかを、マニフェストの返送や報告書で確認します。
処分の各ステップは、処理責任の明確化と法令遵守の証明にもつながります。適切な業者選定と事務手続きの整備を怠らないことが、安全かつ信頼性の高い廃棄物処理の基本です。
6.まとめ
非常灯や防災設備の工事で発生する使用済みバッテリーは、いずれも産業廃棄物に該当するため、法令に則った適切な処理が必要です。特に、リチウムイオン電池や鉛蓄電池などは、保管・運搬・処分において注意すべき点が多く、処分ルートの選定や書類管理も重要になります。
排出事業者の判断は「誰が処分の意思決定をしたか」によって変わり、実務上は多くの場合、処分まで含めて請け負う工事業者が排出事業者となります。処理の際には、許可業者の選定・委託契約・マニフェストの発行など、法的な手続きを適切に踏む必要があります。
バッテリーの処分は、「ただ捨てる」では済まされない法的責任を伴う業務のひとつです。処分ルールを正しく理解し、社内体制を整えておくことが、結果的に業務の信頼性や安全性の向上につながります。
溜まったバッテリーの処分や、新たに発生した廃棄物の取り扱いに悩んだ際は、産業廃棄物処理の専門業者へ早めに相談することをおすすめします。
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