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マメ知識

UPDATE :2025.05.30 
POST :2025.05.30

【徹底解説】建築廃材の今と未来:賢い処理で地球と経済を守る!

建築廃材の出る解体現場

皆さんは、建設現場から毎日大量に排出される「建築廃材」が、実は私たちの生活や地球環境に深く関わっていることをご存知でしょうか?

「ただのゴミでしょ?」と思われがちですが、その実態は非常に複雑で、適切な処理が行われなければ、環境汚染や経済的損失、ひいては私たちの健康にも影響を及ぼす可能性があります。

今回は、この「建築廃材」に焦点を当て、その種類から現在の処理方法、そして未来に向けた新しい取り組みまで、徹底的に解説していきます。

建設業界に携わる方はもちろん、環境問題に関心のある方、そして何より私たちの未来を考えるすべての方に、ぜひ最後までお読みいただきたい内容です。

 

1. 建築廃材とは?その驚くべき排出量と種類

まず、建築廃材とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?

産業廃棄物としての建築廃材

建築廃材とは、建築物の建設、改修、解体など、建設工事に伴って排出される廃棄物の総称です。これらは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)において「産業廃棄物」に分類されます。

日本の産業廃棄物総排出量のうち、建設系廃棄物が占める割合は、実に約2割(環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」より)にも上ります。その量は年間で数千万トンに及び、その膨大な量が処理の大きな課題となっています。

具体的な建築廃材の種類

一口に建築廃材と言っても、その種類は多岐にわたります。主なものを以下に挙げます。

  • がれき類(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊など):
    • 建物の基礎や壁、道路舗装などに使われるコンクリートやアスファルトが解体されたものです。重量が非常に大きく、排出量も圧倒的に多いのが特徴です。
  • 木くず:
    • 柱、梁、壁の下地、型枠などに使われる木材です。種類によって再利用の可否や方法が異なります。
  • 金属くず:
    • 鉄筋、H形鋼などの構造材、配管、サッシ、屋根材などに使われる金属類です。リサイクル価値が高いものが多いです。
  • ガラスくず、コンクリートくず(アスファルト・コンクリート塊を除く)及び陶磁器くず:
    • 窓ガラス、タイル、衛生陶器などがこれに該当します。
  • 廃プラスチック類:
    • 断熱材、防水シート、内装材、配管などに使われるプラスチック類です。種類が多く、分別が難しい場合があります。
  • 安定型最終処分場に処分されるもの(廃石膏ボード、石綿含有産業廃棄物など):
    • 石膏ボードは特に排出量が多く、再資源化が課題です。石綿含有産業廃棄物は、飛散防止のための厳重な管理と処分が必要です。
  • その他:
    • 汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリなど、現場によっては様々な特殊な廃棄物が発生します。

これらの多種多様な建築廃材を、いかに効率的かつ環境負荷を低減しながら処理するかが、現代社会における喫緊の課題となっています。

2. なぜ建築廃材の処理が重要なのか?

建築廃材の適切な処理は、単にゴミを捨てるという行為に留まりません。そこには、地球規模の環境問題から、経済、そして私たちの健康にまで関わる重要な意味が込められています。

環境負荷の増大

  • 埋め立て地のひっ迫:
    • 大量の建築廃材をそのまま最終処分場に埋め立てることは、限られた土地資源を消費し、埋め立て地のひっ迫を加速させます。新たな処分場の確保は、住民の反対などから非常に困難な状況です。
  • 地球温暖化の促進:
    • 製造から廃棄までのライフサイクル全体で、コンクリートや鉄鋼などの建材は多くのCO2を排出します。特に、セメント製造は大量のCO2を排出することで知られています。未処理の廃棄物が埋め立てられると、有機物が分解される際にメタンガスなどの温室効果ガスが発生することもあります。
  • 自然環境の破壊:
    • 不適切な処理や不法投棄は、土壌汚染、水質汚濁、大気汚染を引き起こし、周辺地域の生態系に深刻なダメージを与えます。

不法投棄問題

残念ながら、コスト削減や知識不足から、建築廃材の不法投棄が後を絶ちません。

  • 環境汚染の拡大:
    • 不法投棄された廃棄物からは有害物質が流出し、土壌や地下水、河川を汚染し、周辺住民の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 景観の悪化:
    • ゴミの山は地域の景観を損ない、観光客の減少や地価の下落にも繋がりかねません。
  • 社会コストの増大:
    • 不法投棄された廃棄物の撤去には多大な費用と労力がかかります。最終的には税金として私たち国民がそのコストを負担することになります。

資源の枯渇と経済的損失

建築廃材は、多くの場合、貴重な天然資源から作られています。

  • 天然資源の枯渇:
    • 解体された建材を廃棄するばかりでは、新たな建材を製造するために天然資源を採掘し続けることになり、資源の枯渇を早めます。
  • 製造エネルギーの消費:
    • 新たな建材を製造する過程では、多くのエネルギーを消費し、CO2を排出します。
  • 経済的損失:
    • リサイクル可能な資源を廃棄することは、新たな価値を生み出す機会を失うことにも繋がります。適切にリサイクルすれば、新たな製品の原材料として再利用でき、経済的にもメリットがあります。

これらの問題意識から、建築廃材の適切な処理、特に「リサイクル」は、持続可能な社会を構築するための重要な柱として位置づけられています。

3. 建築廃材処理の現状:課題と解決策

では、現在、日本の建築廃材はどのように処理されているのでしょうか。そこには、国を挙げた取り組みと、依然として残る課題があります。

「建設リサイクル法」の役割

建築廃材の処理において最も重要な法律が、2000年に制定され、2002年に完全施行された「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」、通称「建設リサイクル法」です。

この法律は、特定建設資材(コンクリート、アスファルト・コンクリート、木材、建設発生木材など)を用いた一定規模以上の建築物等解体工事や新築工事において、分別解体等及び再資源化等を義務付けています。

具体的には、以下の3R(スリーアール)の原則に基づいて処理を推進しています。

  • Reduce(発生抑制):
    • 設計段階からの工夫や長寿命化により、廃棄物の発生を抑制する。
  • Reuse(再使用):
    • 一度使用した資材をそのままの形で再度利用する。
  • Recycle(再資源化):
    • 廃棄物を破砕・加工し、新たな製品の原材料として利用する。

この法律の施行により、建設系廃棄物のリサイクル率は大幅に向上しました。しかし、すべての建築廃材がリサイクルされているわけではありません。

現場での分別・解体

リサイクルの第一歩は、建設現場での適切な分別と解体です。

  • 分別解体:
    • 従来の、建物を一気に壊す「一括解体」ではなく、事前に建材の種類や構造を把握し、手作業や重機を使い分けながら、資材ごとに慎重に分別しながら解体を進める「分別解体」が義務付けられています。これにより、リサイクル可能な資材の純度が高まり、再資源化の効率が向上します。
  • 課題:
    • 現場での十分なスペースの確保、作業員の知識・スキル、分別作業にかかるコストや時間など、まだ課題は残ります。特に、複雑な構造の建物や、アスベストなどの有害物質が含まれる建物の解体は、より高度な技術と管理が求められます。

中間処理施設でのリサイクル

現場で分別された建築廃材は、中間処理施設へと運ばれます。中間処理施設では、以下のような工程を経て、再資源化が行われます。

  • 破砕・選別:
    • 搬入された廃材は、種類ごとにさらに細かく破砕され、異物除去や品質の均一化が行われます。磁選機や風力選別機、比重選別機など、様々な機械が使われます。
  • 再生資材の製造:
    • 破砕・選別された廃材は、再生砕石、再生砂、再生木材チップ、鉄スクラップなど、用途に応じた再生資材へと加工されます。
  • 課題:
    • 再生資材の品質基準の確保、市場における再生資材の需要拡大、多様な廃材に対応できる処理技術の開発などが挙げられます。また、異物の混入は再生資材の品質低下に直結するため、搬入時の品質管理が非常に重要です。

最終処分場の現状と課題

リサイクルできない建築廃材(例えば、有害物質を含むものや、品質が低いものなど)は、最終処分場に埋め立てられます。

  • 埋め立て地のひっ迫:
    • 前述の通り、日本は国土が狭く、最終処分場の確保は非常に困難です。新規の処分場建設は、住民の反対運動などから進みにくい状況にあります。
  • コストの増加:
    • 最終処分場の残余容量の減少に伴い、処分費用は年々高騰しています。これは建設コスト全体の増加にも繋がります。
  • 環境への配慮:
    • 環境汚染を防ぐため、最終処分場は厳重な遮水構造や排水処理施設を備える必要がありますが、その維持管理には多大なコストと労力がかかります。

これらの課題を解決するためには、さらなるリサイクル率の向上と、新たな処理技術の開発が不可欠です。

4. 進化する建築廃材リサイクル技術

近年の技術革新により、建築廃材のリサイクルは着実に進化を遂げています。

コンクリート塊の再利用

建築廃材の中で最も多いのがコンクリート塊です。

  • 再生砕石(RC材):
    • コンクリート塊を破砕・選別し、路盤材や構造物の裏込め材、埋め戻し材として再利用されています。粒度や品質によって様々なグレードがあり、JIS規格も整備されています。
  • 再生骨材:
    • 再生砕石をさらに精製し、コンクリートの骨材として再利用する技術も開発されています。高品質な再生骨材の利用は、天然骨材の消費抑制に大きく貢献します。
  • 固化材・地盤改良材:
    • コンクリート塊を粉末状にし、地盤改良材や固化材として活用する技術も実用化されています。

木くずの多様な活用

木くずは、その性質から様々な形で再利用が可能です。

  • 燃料材(バイオマス発電):
    • 破砕した木くずをボイラーの燃料として利用し、発電を行うバイオマス発電に活用されています。CO2排出量削減にも貢献します。
  • 木質ボード・チップ材:
    • パーティクルボードやMDF(中密度繊維板)などの木質ボードの原材料として再利用されています。公園の遊歩道のチップ材としても利用されます。
  • 堆肥化・土壌改良材:
    • 剪定枝など比較的綺麗な木くずは、堆肥として農業や造園に活用されます。
  • 飼料:
    • 一部の木くずは、家畜の敷料や飼料として利用されるケースもあります。

アスファルト・がれき類のリサイクル

道路の解体などで発生するアスファルト・コンクリート塊も重要なリサイクル対象です。

  • 再生アスファルト合材:
    • アスファルト・コンクリート塊を破砕・加熱し、新たなアスファルト合材の原材料として再利用されます。道路舗装に幅広く使用されており、非常に高いリサイクル率を誇ります。

その他のリサイクル技術

  • 廃プラスチック類:
    • 熱分解による油化、RPF(Refuse Plastic & Paper Fuel)燃料化(紙くずなどと混合して固形燃料、いわゆるフラフ燃料にする)、ケミカルリサイクル(化学的に分解してモノマーに戻す)など、様々な方法が研究・実用化されています。
  • 廃石膏ボード:
    • 石膏と紙に分別し、石膏はセメント原料や石膏ボードの原材料に、紙は製紙原料としてリサイクルされています。
  • 金属くず:
    • 鉄スクラップ、アルミスクラップなど、高炉や電炉で再溶解され、鉄鋼製品やアルミ製品の原料として再利用されます。リサイクル率が非常に高く、重要な資源となっています。

これらの技術は、建築廃材を「廃棄物」としてではなく、「資源」として捉え直すことで、持続可能な社会の実現に貢献しています。

5. 未来を創る建築廃材の新しい挑戦

リサイクル技術の進化に加え、建築廃材問題解決に向けて、さらなる新しい挑戦が始まっています。

サーキュラーエコノミーへの転換

従来の「採って、作って、使って、捨てる」というリニアエコノミー(直線型経済)から、「資源を循環させる」サーキュラーエコノミー(循環型経済)への転換が強く求められています。

建設業界においても、建物を長寿命化する設計、解体しやすい構造、リサイクルしやすい素材の選択、建材のリースや再利用プラットフォームの構築など、様々な取り組みが進められています。

BIM/CIMを活用した情報連携

BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)は、建物の設計から施工、維持管理、解体に至るまでのあらゆる情報をデジタル上で一元管理するシステムです。

  • 解体時の効率化:
    • BIM/CIMを活用することで、建物の正確な構造や使用されている建材の種類、量、有害物質の有無などを事前に把握でき、効率的な分別解体計画を立てることが可能になります。
  • 再利用の促進:
    • 解体された建材の情報(種類、品質、量など)をデータベース化し、再利用を必要とするプロジェクトとマッチングさせることで、建材の再利用を促進できます。

革新的なリサイクル技術の研究開発

  • 高度な選別技術:
    • AIやロボットを活用した自動選別システム、X線や近赤外線を用いた非破壊選別技術など、より効率的で高精度な選別技術の開発が進んでいます。これにより、複合素材のリサイクルや、微細な異物の除去が可能になります。
  • 化学的リサイクル:
    • 廃プラスチックや複合素材など、物理的なリサイクルが難しいものを化学的に分解し、元のモノマーに戻して再合成するケミカルリサイクル技術の開発が進んでいます。これにより、リサイクル可能な素材の範囲が大きく広がります。
  • 地産地消型リサイクル:
    • 発生した廃材を、地域内で処理・再利用する「地産地消型リサイクル」の推進も重要です。これにより、運搬にかかるCO2排出量を削減し、地域経済の活性化にも貢献します。

解体工事のスマート化

  • IoT・ドローン活用:
    • 解体現場にIoTセンサーやドローンを導入することで、作業状況のリアルタイム監視、危険箇所の特定、廃材排出量の正確な計測などが可能になります。これにより、作業効率と安全性が向上します。
  • ロボットによる解体:
    • 危険な場所や複雑な解体作業において、遠隔操作ロボットや自律型ロボットの活用が研究されています。これにより、作業員の負担軽減と安全性の確保が期待されます。

建設・解体業界の意識改革

最終的には、建設・解体業界全体で、環境負荷低減と資源循環への意識を高めることが最も重要です。

  • 環境教育の強化:
    • 設計者、施工管理者、現場作業員に至るまで、環境負荷低減に向けた知識と意識を高めるための教育が重要です。
  • 再生資材の積極的利用:
    • 発注者や設計者が、再生資材の品質や性能を理解し、積極的に採用することで、再生資材の市場拡大に繋がります。
  • 環境負荷を考慮した資材調達:
    • 建設段階から、リサイクルしやすさや環境負荷の少ない資材を選択する「エコデザイン」の考え方を導入することが重要です。

これらの取り組みは、単なる廃棄物処理の効率化に留まらず、建設業界全体のビジネスモデルや社会のあり方を変革する可能性を秘めています。

6. 私たちにできること:賢い選択で未来を築く

「建設業界の話でしょ?」と思われるかもしれませんが、実は私たち一般市民にもできることがあります。

  • 住宅のリフォームや解体時:
    • もしご自宅のリフォームや解体を検討されている場合は、信頼できる業者を選び、建設リサイクル法に基づいた適切な分別解体と再資源化が行われるかを確認しましょう。見積もりの内訳に、解体費用だけでなく、廃棄物処理費用やリサイクル費用が明記されているか確認することも大切です。
  • 再生資材の価値を理解する:
    • 再生砕石や再生木材など、再生資材を使った製品の良さを理解し、可能であれば積極的に選ぶことも、リサイクルを促進する一助となります。
  • 環境意識を高める:
    • 日頃からゴミの分別を徹底するなど、環境負荷低減への意識を高めることは、建設廃材問題だけでなく、あらゆる環境問題解決の第一歩となります。
  • 情報発信に関心を持つ:
    • 建設廃材のリサイクルに関するニュースや取り組みに関心を持ち、情報を共有することで、社会全体の意識向上に貢献できます。

小さな一歩かもしれませんが、私たち一人ひとりの意識と行動が、大きな変化を生み出す原動力となるのです。

建築廃材の出る解体現場7. まとめ:建築廃材が拓く持続可能な社会

今回は、建築廃材について徹底的に掘り下げてきました。

膨大な量が発生し、環境問題の根源ともなりうる建築廃材ですが、建設リサイクル法の整備、技術革新、そして業界全体の意識改革によって、着実に「資源」へとその姿を変えつつあります。

しかし、課題はまだ山積しています。最終処分場のひっ迫、多様な廃材への対応、そして再生資材のさらなる需要拡大など、未来に向けた挑戦は続きます。

このブログ記事が、建築廃材への理解を深め、持続可能な社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えるきっかけとなれば幸いです。

未来の地球と、私たちの豊かな暮らしのために、建築廃材のリサイクルは、これからも進化し続けるでしょう。

次回の記事もお楽しみに!

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この記事を書いたスタッフ

森田 一誠

森田 一誠 笑う産廃セールスマン

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