現代の暮らしや仕事の現場では、スプレー缶が多く使われています。たとえばヘアスプレー、殺虫剤、スプレー塗料、潤滑油、エアダスターなど、身の回りのさまざまな場面で使われています。
しかし、こうしたスプレー缶の処理には特別な注意が必要です。間違った方法で処分したり、長期間放置したりすると、火事や爆発、環境汚染などの大きな事故につながる可能性があります。
この記事では、スプレー缶を安全かつ正しく処理するためのポイントを、わかりやすく解説します。
法的規制と事業者責任
スプレー缶の処理は、廃棄物処理法の規制の下で実施する必要があります。産業廃棄物として排出される場合、排出事業者は処理の最終段階まで責任を負う排出事業者責任の原則が適用されます。このため、信頼できる許可業者への委託と、適切な委託契約の締結が不可欠となります。
マニフェスト制度の適用により、処理の各段階を書面で管理し、適正処理の確認を行います。電子マニフェストの活用により、リアルタイムでの処理状況確認も可能となり、透明性の高い処理管理を実現しています。
内容物によっては、特別管理産業廃棄物に該当するスプレー缶もあります。特に、有機溶剤や重金属を含む製品、感染性物質を含むエアゾール製品などは、より厳格な管理が要求されます。これらの処理には、特別管理産業廃棄物処理業の許可を有する業者への委託が必要となり、処理方法についても法令で定められた基準を満たす必要があります。
スプレー缶の種類と特性
スプレー缶は用途によって様々な種類に分類され、それぞれ異なる特性と処理上の注意点があります。化粧品系スプレーには、ヘアスプレー、制汗剤、ボディスプレーなどがあり、主にエタノールやイソブタンを噴射剤として使用しています。これらは比較的処理しやすい部類に入りますが、アルコール成分により可燃性があるため注意が必要です。
工業用スプレーは最も種類が豊富で、潤滑油スプレー、防錆剤、接点復活剤、シリコンスプレーなどが含まれます。これらは石油系溶剤や化学物質を含むことが多く、処理時には特別な配慮が必要となります。特に防錆剤には重金属系の添加剤が含まれることがあり、特別管理産業廃棄物に該当する場合もあります。
塗料系スプレーは、ラッカー、アクリル塗料、プライマーなど様々な種類があります。これらは有機溶剤を大量に含むため、高い可燃性と毒性を持ちます。また、塗料の固化により缶内部に残存物が付着しやすく、完全な除去が困難な場合があります。
スプレー缶の噴射剤は、その化学特性により処理方法が大きく異なります。LPG(液化石油ガス)系は、プロパン、ブタン、イソブタンなどの炭化水素ガスを使用しており、最も一般的な噴射剤です。これらは高い可燃性を持つため、火気厳禁での取扱いが必要となります。
DME(ジメチルエーテル)系は、比較的新しいタイプの噴射剤で、オゾン層破壊係数がゼロという環境面でのメリットがあります。しかし、LPG系と同様に可燃性があり、処理時には同等の注意が必要です。
HFC(ハイドロフルオロカーボン)系は、主にエアダスターや精密機器用クリーナーに使用されています。不燃性という特徴がある一方で、強力な温室効果ガスであるため、大気放出を防ぐ特別な回収・分解処理が必要となります。
CO2(二酸化炭素)系は、食品用途や一部の工業用途で使用されており、環境負荷が最も少ない噴射剤です。ただし、高圧であることに変わりはなく、容器の取扱いには注意が必要です。
スプレー缶の容器材質も処理方法に大きく影響します。アルミニウム製缶は軽量で腐食に強い特徴があり、リサイクル価値も高いため、適切な処理により高品質な再生資源として活用できます。一方、薄肉であるため外部からの衝撃に弱く、取扱い時には特別な注意が必要です。
スチール製缶は強度が高く、厚肉であるため比較的安全に取扱えますが、錆びやすいという特徴があります。長期間放置された場合、錆びによる穿孔や強度低下が起こりやすく、処理前の状態確認が特に重要となります。
最近では、一部でプラスチック製の容器も使用されていますが、これらは別途プラスチック廃棄物としての処理が必要となり、金属缶とは異なる処理ルートを選択する必要があります。
スプレー缶の中には、液体の成分と、それを押し出すためのガスが高い圧力で詰められています。使われているガスは、火がつきやすい可燃性のものや、気体を圧縮したものが多く、爆発の危険があります。
通常、缶の中の圧力は2〜4気圧ほどですが、温度が高くなったり、外から強い衝撃が加わったりすると、さらに圧力が高くなり、破裂する恐れもあります。
放置してしまうとどうなるのか?
スプレー缶をそのままにしておくと、時間の経過とともにさまざまな危険が増えていきます。
-
缶のサビや腐食
特に湿気の多い場所や外に放置された缶は、金属部分がどんどんサビて弱くなります。最終的に缶が破れたり、ガスが漏れたりする可能性があります。 -
気温の変化による影響
夏の暑さで缶の中の圧力が高くなったり、冬の寒さで中身の性質が変わったりすることで、缶への負担がたまり、突然破裂することもあります。 -
中身の変化による危険
長く放置されたスプレー缶では、中の液体が分離したり変質したりすることがあります。これにより、有毒なガスが発生したり、思わぬ化学反応が起きたりする恐れがあります。特に溶剤(塗料や洗浄スプレーなど)を含む製品では、ガスが缶内にたまり、少しの火花で爆発を引き起こすこともあります。
火災や爆発のリスク
中身が残ったままのスプレー缶は、火事や爆発の原因になることがあります。缶の中のガスは、静電気や摩擦、火の気に反応して一気に燃え上がる可能性があります。
とくに工場や倉庫などでたくさんのスプレー缶がたまっている場合、1本の爆発が連鎖的に広がり、大きな火災になることもあります。実際に、スプレー缶の不適切な管理が原因で、建物全体が焼失する事故も起きています。
破裂や漏れによってスプレー缶の中身が外に出てしまうと、土や水を汚す原因になります。特に塗料スプレーや殺虫剤などには、生き物に有害な成分が含まれているものもあり、長期間にわたり自然に悪い影響を与えることがあります。
また、パソコン掃除などに使われるエアダスターの中には、地球温暖化に強く影響するガスが使われていることがあります。これをそのまま空気中に放出してしまうと、CO₂よりも何百倍もの温室効果があるため、環境に深刻な影響を与えてしまいます。
スプレー缶を安全に処理するには?
スプレー缶を処理する前に、何が入っているか、どれくらい残っているかをしっかり調べることが大切です。缶を振って音を聞いたり、重さを測ったりして、残量を確認します。
また、缶の見た目も重要なチェックポイントです。サビやへこみ、漏れなどがある缶は特に注意が必要です。長いあいだ暑さや湿気にさらされていた場合、破裂の危険が高まります。
スプレー缶を安全に廃棄するには、以下の点にご注意ください:
基本的な準備
- 完全に空にする:容器内のガスや液体を全て使い切ってから廃棄してください
- 屋外での作業:ガスは空気より重く、室内の床付近に蓄積される危険があるため、必ず屋外で作業を行ってください
- 火気厳禁:火気のない安全な場所で作業することが必須です
安全対策
静電気対策:静電気が発生しやすい環境や衣服は避けてください
保護具の着用:有害物質の吸入や皮膚接触を防ぐため、マスクと手袋を必ず着用してください
無理な穴開けは禁止:古いスプレー缶で噴射口が詰まっている場合でも、自分で穴を開けることは危険です。そのような場合は自治体または製造元にご相談ください。
廃棄処理の手順
事業系廃棄物の場合
事業所から出るスプレー缶は産業廃棄物に分類されるため、専門の処理業者への依頼が必要です。ただし、スプレー缶の回収に対応できる業者を選択することが重要です。
スプレー缶の処理は、法律に従って正しく行う必要があります。特に、企業や工場などで大量に処分する場合は、処理の最終段階まで責任をもつ必要があります。
そのため、信頼できる許可業者に処理を依頼し、しっかり契約を交わすことが大切です。また、処理の流れをきちんと記録に残す「マニフェスト制度」を活用することで、安全で透明な処理ができます。
中には、有害な成分を含むスプレー缶もあり、これらは「特別な廃棄物」として、さらに厳しいルールで処理しなければなりません。たとえば、有機溶剤や重金属、感染のおそれがある成分などが入ったスプレー缶です。
このような製品を扱う場合は、専門の許可を持った業者に依頼する必要があります。
古いスプレー缶について
- 1980年代製造品:フロンガスが含まれている可能性があります
- フロンガス処理:取扱いには専門資格が必要なため、対応可能な業者が限定されます
- 時代による成分の違い:製造年代によっては現在使用されていない成分が含まれており、特別な処理が必要な場合があります
古いスプレー缶を処分する際は、内容物の詳細を確認し、製造元または専門業者にお問い合わせいただくことをお勧めします。
まとめ
スプレー缶の適正処理は、安全性、環境保護、資源循環、法令遵守など、多面的な要素を総合的に考慮した取り組みが必要です。放置することの危険性を十分に理解し、専門的な知識と設備を有する業者による適正処理を実施することが、社会全体の安全と環境保護につながります。
産業廃棄物処理業者として、私たちは最新の技術と豊富な経験を活かし安全性を最優先としながら、環境負荷の最小化と経済性の両立を実現し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります。
スプレー缶の処理に関するご相談は、ぜひジェイポートまでお気軽にお問い合わせください。
株式会社ジェイ・ポートでは、だれでもカンタンに産廃処分ができる産廃コンビニをご提供しております。
▼詳しくはこちらまで▼